新卒1年目や転職して間もない時期。この時期は、思っている以上に心が削られます。これを聞いてなんとなく心当たりがある方も多いのではないでしょうか?希望を持って入ったはずなのに、実際に働き始めると、思うように動けない。周りの人は普通に仕事をしているのに、自分だけ流れに乗れていない。何をするにも確認が必要で、ひとつひとつの判断に時間がかかる。そんな風に感じて居られる方も多いのではないでしょうか?
そんな毎日が続くと、ふとこう思ってしまいます。「自分はこんなに仕事ができない人間だったのか」でも、最初に伝えたいのは、そこまで自分を責めなくていいということです。新しい環境でしんどくなるのは、能力がないからではありません。むしろ、新しい場所に適応しようとしているからこそ、脳も心もかなり疲れます。
私自身も、社会人4年目と17年目で転職を経験しています。特にアラフォーに近い年齢での転職では、ある程度の経験があるはずなのに、新しい環境で思うように動けず、かなり戸惑いました。「前の職場ではもっとできていたのに」「経験年数はあるのに、なぜこんなに動けないんだろう」「周りからどう見られているんだろう」そんな感覚に何度もなりました。
ただ、その後に大きく気持ちが変わる瞬間がありました。それは、新しく入ってきた職員に業務を教える立場になったときです。そのとき初めて、自分がこの環境の中でちゃんと積み上げてきたことに気づきました。今回は、転職1年目や新卒1年目の「耐え」の時期を、少しでも希望に変えるために、社会的比較という視点から考えていきます。
この記事でわかること
- 新卒1年目や転職直後に自信を失いやすい理由
- 新しい環境で「できない自分」に見える仕組み
- 社会的比較がメンタルに与える影響
- 後輩や新しい職員が入ると見え方が変わる理由
- 今のつらさを少し前向きに捉える考え方
こんな人におすすめ
この記事は、次のような人におすすめです。
- 新卒1年目で、職場に馴染めず苦しんでいる人。
- 転職したばかりで、前の職場との違いに戸惑っている人。
- 経験者として入ったのに、思ったように動けず自信を失っている人。
- 周りの人と比べて、「自分だけできていない」と感じている人。
- 仕事に行く前から気持ちが重くなる人。
- 「この仕事に向いていないのかも」と思い始めている人。
そして、アラフォーでの転職や、ある程度経験を積んでから新しい環境に飛び込んだ人にも読んでほしいです。経験がある人ほど、できない自分を受け入れるのは難しいです。でも、新しい環境では誰でも一度、初心者になります。新しい場所に挑戦しているからこそ、起こることです。「自分だけ馴染めていない」「仕事に行くのがしんどい」「周りと比べて落ち込む」そんな人に読んでもらいたい内容です。
なぜ仕事ができないと感じるのか

なぜ自分が小さく見えるのか。新卒1年目や転職直後は、自分がものすごく小さく見えます。周りの人は、何気ない会話の中で業務を進めていきます。それに対して、自分はひとつひとつで止まってしまう。「これは誰に聞けばいいんだろう」「このやり方で合っているのかな」「今、声をかけてもいいのかな」そんな小さな迷いが積み重なります。
この状態が続くと、だんだん仕事そのものよりも、職場にいること自体がしんどくなります。でも、これは能力が低いからではありません。新しい環境では、仕事の知識だけでなく、その職場特有の流れを覚える必要があります。
たとえば
・報告の仕方
・相談する順番
・書類のルール
・職場内の人間関係
・暗黙の了解
・その場独自の優先順位
こうしたものは、外から見ただけではわかりません。どれだけ経験があっても、初めての環境では一度リセットされます。つまり、あなたが今感じている「できなさ」は、能力のなさではなく、まだその場所の文脈を読み取っている途中ということです。
転職によって自分らしさが十分発揮できていないと感じておられる場合には、こちらの記事でそもそも何故そういった現象が生じているのか詳しくまとめています。是非、こちらの記事も参考にしてみてください。
環境が変わるとリセットされる
私は社会人4年目で一度転職し、その後、社会人16年目でも転職を経験しました。4年目の転職では、まだ若さもありました。わからないことがあっても、「まあ、新しい環境だから仕方ない」と思える部分もありました。
でも、16年目での転職は少し違いました。それなりに経験もある。専門職として積み上げてきたものもある。多少なりともその業界に対してのプライドもありました。ある程度、自分なりに仕事ができる感覚も持っていました。それなのに、新しい職場に入ると、思った以上に動けない自分がいました。
「経験年数はあるのに、なんでこんなに確認ばかりしているんだろう」
「周りの若い職員の方がよっぽどスムーズに動いている」
「自分はこの職場で本当にやっていけるのかな」
「一度教えてもらったことがすぐに忘れてしまっている」
そんなふうに感じることもありました。ここで大事なのは、経験が消えたわけではないということです。ただ、前の職場で使っていた経験が、新しい職場の流れにまだ変換されていなかっただけです。同じ仕事でも、場所が変われば求められる動き方は変わります。同じ専門職でも、急性期、回復期、生活期、施設、在宅、企業では、見ているものも、優先順位も、求められるスピードも違います。
だから、新しい職場では一度リセットされたように感じます。これは、ベテランでも起こります。アラフォーでも起こります。経験年数があっても起こります。むしろ、経験があるからこそ、「できていた自分」と「今の自分」の差に苦しくなることもあります。
比較の罠
ここが一番この記事で言いたかった部分です。新しい環境で心がしんどくなる大きな理由のひとつが、比較です。人は、自分の現在地を知るために、無意識に周りと比べます。心理学では、これを「社会的比較」と言います。
簡単に言えば、「自分は周りと比べてどうなのか」を見ながら、自分の立ち位置を確認する心の働きです。比較そのものは悪いものではありません。周りを見ることで、自分に足りない部分に気づけます。目標になる人を見つけることもできます。成長するきっかけにもなります。
しかし、新卒1年目や転職直後は、この比較がかなり苦しく働きます。なぜなら、比べる相手の多くが「その環境に慣れている人」だからです。先輩・上司・長く働いている職員・その職場の流れを知っている人。その人たちと、入ったばかりの自分を比べてしまう。
これは、かなり不公平な比較です。たとえるなら、レベル1の自分と、レベル50のベテランを同じ土俵で戦わせているようなものです。勝てなくて当然です。差があって当然です。迷って当然です。でも、渦中にいると、それが見えません。「みんなできているのに、自分だけできない」そう感じてしまいます。これが、比較の罠です。
上を見るほど苦しくなる
社会的比較には、「上方比較」と「下方比較」があります。上方比較とは、自分よりできる人と比べることです。仕事が早い人・判断が的確な人・説明が上手な人・職場の流れを完全に把握している人。
こういう人を見ると、「自分もああなりたい」と思えることがあります。だから、上方比較には成長につながる良さもあります。ただし、入職直後や転職直後は注意が必要です。まだ職場に慣れていない時期に、ベテランばかりと比べると、自分の足りないところばかりが見えてしまいます。
「あの人はすぐ判断できるのに」「あの人は利用者さんやお客さんとの関係もできているのに」「あの人は説明もうまいのに」「それに比べて自分は……」こうなると、成長のための比較ではなく、自分を責めるための比較になってしまいます。
特に真面目な人ほど、ここに入り込みやすいです。「早く役に立たないと」「迷惑をかけてはいけない」「できない人だと思われたくない」「経験者なのに情けない」そう思うほど、周りとの差が大きく見えます。
でも、冷静に考えれば、先輩やベテランはその場所で何年も積み上げています。それを、入って数日、数週間、数か月の自分と同じ基準で比べるのは、かなり厳しいことです。苦しくなるのは当然です。
「耐え」の正体
よく、新しい環境では「最初の1年は耐える時期」と言われます。でも、この「耐える」という言葉は、少し乱暴に聞こえるかもしれません。耐えると聞くと、根性で我慢するようなイメージがあります。もちろん、無理をしすぎる必要はありません。心身に明らかな不調が出ているなら、相談したり、休んだり、環境を見直したりすることも大切です。そのうえで、あえて「耐え」という言葉を使うなら、私はこう考えています。
転職1年目や新卒1年目の「耐え」とは、比較対象が偏っている時期を乗り切ることです。最初の時期は、周りがみんな上に見えます。仕事を知っている。人間関係ができている。判断が早い。余裕があるように見える。その中にいると、自分の成長が見えにくくなります。
本当は昨日より少しできるようになっている。先週より少し聞きやすくなっている。1か月前より少し流れが見えている。でも、ベテランと比べてしまうから、その小さな成長が見えません。つまり、「成長していない」のではなく、成長が見えにくい場所にいるということです。ここを間違えると、自分を必要以上に責めてしまいます。
変化が起こった瞬間

私自身、アラフォーで転職したとき、かなりこの状態に入りました。経験年数はあるのに、職場のルールや流れがわからない。専門的な知識はあっても、その場所でどう動けばいいかがわからない。周りの職員はスムーズに動いているのに、自分だけ確認が多い。
ただ、しばらくして新しく入ってきた職員に対して、業務を指導する機会がありました。そのとき、明らかに自分の中で変化が起こりました。新しく入ってきた職員が迷っている姿を見たとき、少し前の自分と重なりました。
「そうそう、最初はそこがわかりにくい」「この流れは慣れるまで戸惑う」「その確認は自分も最初に迷った」そう思いながら説明している自分がいました。そして、教えているうちに気づきました。「あれ、自分はこの業務を説明できるようになっている」「前は自分もわからなかったのに、今は流れを伝えられている」「ちゃんとこの環境に慣れてきていたんだ」この気づきは大きかったです。
それまで、自分の中では「まだまだできていない」という感覚が強くありました。でも、新しく入ってきた人に教える立場になったことで、自分がこの環境で積み上げてきたものが見えるようになりました。比べる相手が、ベテランから新しく入ってきた職員に変わった。そのことで、自分の現在地が見えたような気がしました。
後輩が鏡になる
後輩や新しく入ってきた職員は、過去の自分を映す鏡になります。これは、相手を下に見るという意味ではありません。むしろ、自分も同じように迷っていたからこそ、その人の不安がわかります。
最初はどこに何があるかわからない。
誰に聞けばいいかわからない。
言葉の意味がわからない。
その職場独自の流れがわからない。
その姿を見ることで、過去の自分を思い出します。そして同時に、今の自分がどれだけ進んできたかにも気づきます。人は、自分の成長を自分だけではなかなか感じられません。毎日少しずつ変わるものは、変化として認識しにくいからです。
たとえば、筋トレやダイエットでも、毎日鏡を見ていると変化に気づきにくいです。でも、数か月前の写真を見ると、「あれ、けっこう変わっている」と気づくことがあります。仕事も同じです。毎日少しずつ慣れている。毎日少しずつ判断できることが増えている。毎日少しずつ言葉が出るようになっている。でも、自分ではそれに気づきにくい。後輩や新しく入ってきた人の存在は、その変化に気づかせてくれます。
「あの頃の自分」と「今の自分」を比べるきっかけになるのです。自分が急に成長したわけではありません。ある日突然、仕事が全部できるようになったわけでもありません。変わったのは、比較する相手です。
比べる相手が変わると、自分の立ち位置が変わって見える。立ち位置が見えると、心の感じ方も変わる。これが、社会的比較がもたらすパラダイムシフトです。「できない自分」しか見えなかった世界から、「ちゃんと積み上げてきた自分」が見える世界へ変わる。この変化は、新卒1年目や転職1年目で苦しんでいる人にとって、大きな希望になると思います。
デメリットとメリット

社会的比較には、デメリットもメリットもあります。
デメリット
まずデメリットは、比べる相手を間違えると、自分を必要以上に責めてしまうことです。新卒1年目や転職直後に、ベテランばかりと比べる。まだ環境に慣れていないのに、何年も働いている人と同じように動こうとする。その結果、「自分はダメだ」と感じてしまう。
特に、真面目で責任感が強い人ほど危険です。「早く戦力にならないと」「迷惑をかけたくない」「できないと思われたくない」そう思うほど、上ばかり見てしまいます。
メリット
一方で、メリットもあります。比較は、自分の現在地を知るための道具にもなります。先輩と比べれば、目指す方向が見えます。後輩と比べれば、自分の成長が見えます。過去の自分と比べれば、少しずつ前に進んでいることに気づけます。つまり、比較そのものが悪いのではありません。大切なのは、今の自分に合った比較をすることです。
しんどい時期に、遠すぎる相手と比べすぎない。まだ慣れていない時期に、完成形の人と比べすぎない。自信がなくなっている時期には、昨日の自分や過去の自分と比べる。比較の向きを変えるだけで、心の負担は少し軽くなります。
今できる工夫

では、新卒1年目や転職直後に、どんなことを意識すればいいのでしょうか。大切なのは、「比べないようにする」ことではありません。人はどうしても比べます。だから、比べることを完全にやめようとしなくていいです。その代わり、比べる対象を少し変えてみる。
たとえば
・前より質問する内容が具体的になった
・前より人の名前を覚えた
・前より職場の流れがわかってきた
・前より迷う時間が短くなった
・前より相談しやすい人が増えた
・前よりひとつの業務にかかる時間が短くなった
こうした変化を見ることです。大きな成果でなくて構いと思います。むしろ、新しい環境では小さな変化の方が大切だと考えています。最初から完璧にできる必要はありません。まずは、昨日より少し迷わない。先週より少し聞きやすい。先月より少し流れが見える。そのくらいで十分です。
個人的にはできればメモを残しておくのもおすすめです。「今日わかったこと」「今日できたこと」「次に確認すること」これを少し書いておくだけでも、自分の成長が見えやすくなります。成長は、見ようとしないと見えません。だからこそ、自分の中に小さな記録を残しておくことが大切です。
社会的比較の罠にハマっているときは、どうしても周りの目ばかりが気になってしまいます。そんな時こそ、外の世界に目を向けて『客観的な自分の市場価値』を知ることで、今の場所での積み上げに自信が持てたり、あるいはもっと自分らしく輝ける場所が見つかったりすることもあります。
今の環境を耐え抜くためのヒントとして、あるいは新しい一歩のために、まずは自分にぴったりのキャリア診断から始めてみてはいかがでしょうか。
しんどい時の注意点
ただし、「耐える」という言葉を都合よく使いすぎるのは危険です。新しい環境に慣れるには時間が必要です。でも、心や体を壊してまで耐える必要はありません。
たとえば
・眠れない日が続く
・食欲が極端に落ちる
・出勤前に強い吐き気や動悸がある
・休日も仕事の不安で休めない
・涙が止まらない
・自分を責める考えが止まらない
こうした状態が続く場合は、単なる慣れの問題として片づけない方がいいです。信頼できる人に相談する。職場の上司や先輩に状況を伝える。産業医や医療機関、相談窓口を使う。場合によっては休む。それも大切な選択です。
特に睡眠は非常に重要です。どんなときだって睡眠は重要ですが、環境が変わったタイミングはより一層重要だと考えています。下記の記事では転職や就職によって環境が変わった人にむけて「睡眠」についてまとめておりますので、是非こちらの記事も参考にしてもらえたらと思います。
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この記事で伝えたいのは、「つらくても黙って我慢しよう」という話ではありません。今感じている苦しさの一部には、比較の仕組みが関係している。だから、自分を責めすぎないでいただきたいと思います。
まとめ
新卒1年目や転職直後は、自分が小さく見えやすい時期です。周りの人はスムーズに動いている。自分だけが迷っている。自分だけが確認している。自分だけが遅れている。そんなふうに感じることがあります。でも、それは能力がないからとは限りません。新しい環境では、その職場特有の流れや文脈を覚える必要があります。そして、その途中でベテランや先輩と比べてしまうから、自分が必要以上にできないように見えてしまいます。これが、社会的比較の罠です。
私自身も、社会人4年目と16年目で転職を経験しました。特にアラフォーでの転職では、経験があるはずなのに思うように動けず、かなり戸惑いました。でも、新しく入ってきた職員に業務を教える中で、明らかに自分の中に変化が起こりました。比べる相手が変わると、世界の見え方は変わります。ベテランと比べていたときは、自分が小さく見えました。
でも、新しく入ってきた人に教える立場になったとき、自分の成長が見えました。だから、今しんどい人に伝えたいです。今のあなたは、できない人ではありません。新しい環境に適応している途中の人です。今はまだ、周りがすごく見えるかもしれません。自分だけが遅れているように感じるかもしれません。
でも、少しずつ職場の流れは見えてきます。少しずつ質問の仕方も変わってきます。少しずつ自分の言葉で説明できることが増えてきます。そしていつか、新しく入ってきた誰かに教える立場になったとき、気づくはずです。「あのしんどかった時期にも、自分はちゃんと進んでいたんだ」と。比べる相手が変われば、世界の見え方は変わります。今はまだ「耐え」に感じる時間かもしれません。でもその時間は、未来の自分が誰かに優しく教えるための経験にもなります。



