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急性期病院で働く作業療法士の特徴|ICUの緊張感から社会復帰支援まで、リアルに語る

急性期病院(いわゆる“救急・ICUがある病院”)の作業療法って、ひと言でいうと「医療のど真ん中にいる感覚」がめちゃくちゃ強いと思います。患者さんの状態は日々どころか、時間単位で変わる。昨日できていたことが今日できないこともあるし、その逆もある。だからこそ、こちらの判断や連携が、良くも悪くも結果に直結しやすい現場です。

 

一方で、緊張感・恐怖感・責任感とも隣り合わせ。若手の頃は特に、メンタルの維持が難しい瞬間があるのも正直なところです。でも、そこで得た経験は“技術”だけじゃなくて、“人としての器”を広げてくれる。僕は急性期にはそんな側面があると思っています。

 

この記事では、学生さんや、回復期・生活期から転職を考えているOTさんが「急性期って実際どうなの?」をイメージできるように、現場のリアルを整理してまとめます。実体験を元に書き綴っていますが、病院によって体制は色々だと思いますので、一つの参考として読んで頂けたらと思います。

     この記事でわかること

  • 急性期ならではの「医療に近い」働き方と、そこで起きる感情のリアル
  • 脳卒中・高次脳機能・認知・運転評価など、OTの主戦場になりやすい領域
  • 退院先(在宅か転院か)を短期間で見極める評価の考え方
  • 整形外科(術後)やハンドセラピーで求められる知識・技術
  • 多職種連携の密度を上げるために必要な“共通言語”
  • 活かしやすい資格や、持っていると武器になりやすい知識領域

こんな人に読んでほしい

  • 学生で、急性期実習が近い/急性期に興味がある人
  • 回復期・慢性期から、急性期へ転職を考えている作業療法士
  • 「もっと医療の現場に近いところで働きたい」と感じている人
  • 脳卒中・高次脳機能障害・認知機能の評価を深めたい人
  • “短期間での判断”や“チーム医療”にやりがいを感じるタイプの人

急性期病院の特徴(OT目線で整理)

ここからは、急性期の特徴を「現場で起こること」と「OTとして求められること」に分けて、少し具体的に書きます。

1)ICU・救命領域の「命に関わっている感覚」

急性期の象徴は、やっぱりICUや救急病棟だと思います。医療デバイス、ルート、治療方針、鎮静、呼吸循環…そういう情報が当たり前のように飛び交っていて、リハ職であっても「医療チームの一員」として見られます。

この“医療に近い感覚”が好きな人には、急性期はたまらない分野です。実際私自身も臨床経験が浅い頃には、人工呼吸器を装着している患者様に対してリハビリをしている時などは、この医療に携わっているという感覚が好きで如何にも「医療従事者」という感覚がありました。

ただし裏返すと、緊張感も強い。患者さんの状態変化に対して、恐怖感や不安が出るのは自然です。特に若手のうちは、頭ではわかっていても心が追いつかないことがある。良い意味でもこの不安を常に感じている必要があるそんな現場だというふうに感じています。ここを通ると、価値観が変わります。

「人ってこんなに簡単に状態が変わるんだ」
「家族の気持ちはこんなにも揺れるんだ」

そういう場面に触れる回数が圧倒的に増えるからです。技術だけじゃなく、人生観そのものに影響が出る人も少なくないと思います。

2)脳卒中:OTの主戦場(高次脳機能・認知・運転評価)

急性期での主要疾患のひとつは脳卒中。OTとしては特に、高次脳機能障害(注意・記憶・遂行機能・半側空間無視など)認知機能障害(高齢者含む)ADLの見立てと、生活再建の道筋づくり。

このあたりが“仕事の核”になりやすいかと思います。そして近年、話題に上がりやすいのが「自動車運転の評価」。急性期の段階ですべてが完結するわけではないですが、退院後の生活を考えたときに、運転というテーマは避けて通れません。

特に高齢社会が進む現在の日本においてはこの業務は急性期だけでなくどの分野において重要なOTの責務だと思います。特に、急性期の時点で、認知・注意・視空間・病識などを丁寧に見立てておくことが、回復期以降の方針にもつながります。

3)在宅か転院かを短期間で判断する:予後予測と総合評価

急性期は“時間が短い”。近年では急性期の在院日数は2週間程度ともされています。だからこそ、短期間で総括的に評価して、次の行き先を考える必要があります。入院当日に医師から「この人、家に帰れるかな?」と相談を持ちかけられることだってあります。

  • 自宅へ帰れるのか
  • 介護サービスを入れれば帰れるのか
  • 回復期へ転院が妥当か
  • 医療的管理がまだ必要か

ここで重要になるのが、予後予測の視点と、情報統合の力です。評価用紙の項目を埋めるだけでは足りなくて、「いまの身体機能」と「高次脳機能」と「家族背景」と「生活環境」を、ひとつのストーリーとして組み立てていく感じ。このスキルが伸びると、急性期を出たあとも強いです。どこへ行っても“見立てができるOT”は重宝されると思います。もちろんその為には、その地域の特性や介護サービス等幅広い知識が求められるので、やはり急性期で学べることは計り知れないと思います。

4)整形外科・ハンドセラピー:術後が多いのは急性期

急性期では整形外科術後も多く、手外科(ハンド)領域は、知識と技術が必要になります。術式や固定、禁忌、腫脹管理、早期介入の考え方など、「知らないと怖い」ポイントがはっきりしている分野です。

整形外科分野においてはやはり解剖学や運動学をはじめ基礎的な医学を頭に入れておく必要があります。脳卒中分野などとは異なり、やや一定の答えがありその答えにいかにして辿り着くかといった感覚さえあります。

また病院の機能(一次・二次・三次)によって症例の幅は違いますが、場合によってはアンプタ(切断)や腱損傷など、より重い症例に関わることもあります。だからこそ、整形・創傷・循環などの基本的な理解が、じわじわ効いてきます。個人的にはOTの業界でもかなり理系的な要素が強いそんな分野だと感じています。

5)多職種連携の密度が高い:共通言語が武器になる

急性期は、多職種連携が“重要”というより“前提”です。医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士・管理栄養士・MSW…関わる人が多く、意思決定のスピードも早い。ここで差が出るのが、「共通言語をどれだけ持っているか」。

例えば、呼吸器の設定や酸素化の見方を最低限理解しているだけで、会話の質が変わります。そして、その知識があるかないかで「なぜこの治療を行なっているのか」など方針が見えてきます。やはりこのような知識は養成校で学ぶには不十分です。現場を通じてしか学べないので、常に自己研鑽が必要になってきます。

「リハ職はリハだけしてればいい」では通りにくい場面がある。逆に言えば、共通言語が増えるほど連携の密度が上がり、OTとしての存在感も上がります。様々な知識や情報に精通しているセラピストはやはりどこに行っても協力な強みがあると言えます。

急性期OTの“求められやすい力”

現場感をつかみやすいように、要点を表にまとめます。

テーマ

急性期OTで起こりやすいこと

求められる力(ざっくり)

ICU/救命

状態変化が速い、医療デバイスが多い

リスク管理、情報収集、説明力

脳卒中

高次脳機能・認知の見立てが重要

評価力、病態理解、生活への翻訳

退院支援

在宅か転院か、短期間で判断

予後予測、統合力、家族支援

整形/手外科

術後介入、禁忌が明確

疾患理解、ハンド技術、腫脹管理

多職種連携

会議・カンファ・情報共有が密

共通言語、伝達力、提案力

活かせそうな資格・知識(持っていると強い、伸ばすと武器)

資格は“持ってるだけ”ではなく、“現場でどう使うか”が大事ですが、急性期は特に「知識の土台がある人」が伸びやすいです。

  • 三学会合同呼吸療法認定士:呼吸・酸素療法・人工呼吸器の理解が、ICUや周術期で効きやすい
  • 循環器系の学び(心リハ領域):病態・運動負荷・バイタルの読み方が武器になる
  • 摂食嚥下の基礎〜関連資格:急性期は誤嚥リスクや栄養管理の話題が多く、会話の質が上がる
  • 高次脳機能・認知の研修:OTの専門性の核。評価の言語化ができると強い
  • ハンドセラピー(手外科)関連の学び:術後の介入で自信につながりやすい
  • 運転評価の知識:地域や病院の体制によるが、今後さらに需要が上がりやすいテーマ

「資格を取る」より先に、まずは呼吸・循環・整形術後・脳卒中(高次脳機能)の基礎を“共通言語として話せるレベル”にしておくと、転職後の立ち上がりが早くなります。

私自身も呼吸療法認定士を持っている数少ないOTでしたので、病院内では非常に強みとして発揮することができました。少なくとも他職種からはその分野のことを知っているセラピストとして認識されていたように感じます。

現在急性期で勤めている・急性期で自分の強みを見つけていきたい・これから急性期に挑戦しようと思っているという方には是非自分のスキルを高めるのも個人的にはオススメですし、私自身も更に技術に磨きをかけていきたいと考えております。

どうやって磨けばよいのか・なにから始めればよいのかわからないという方はこういったサービス(スマホとパソコンで資格学習 )を活用するのも手段かもしれません。私自身はたまたま信頼できる同僚や後輩と一緒に切磋琢磨することができましたが、やはり様々な職場環境があると思います。そういった場合にはこちらの活用も検討してみても良いのではないでしょうか。

やりたいことや現在の強みを一度確認してみてもよいかもしれません。こちらの書籍では自分の特徴について客観的に捉える方法についても紹介されていますので、是非就職や転職の前に参考にしてみてもよいかもしれません。

デメリットとメリット

ここは良い面だけじゃなく、しっかりと両方書いておきたいと思います。個人的には急性期と回復期の療法を経験してきた身としては急性期は、合う合わないが出やすいからです。

デメリット(しんどいところ)

  • 緊張感が強い:命に関わる現場なので、心理的負荷がかかりやすい
  • スピードが速い:短期間で評価・判断が必要で、慣れるまで消耗しがち
  • 学ぶ範囲が広い:脳卒中だけでなく、整形、内科、周術期など横断的になる
  • “自分の無力感”に当たることがある:状態が悪化するケースもあり、割り切りが難しい瞬間がある
  • 連携が必須:一人で完結しない。コミュニケーションが苦手だと疲れやすい

メリット(得られるもの)

  1. 医療のど真ん中にいる実感:治療と生活の橋渡しをしている感覚が強い
  2. 評価力と予後予測が鍛えられる:どこへ行っても通用する“見立て”が身につく
  3. 多職種連携が上手くなる:共通言語が増え、提案できるOTになりやすい
  4. 脳卒中・高次脳機能の経験が濃い:OTの専門性を深めやすい
  5. 人としての成長が大きい:価値観に触れ続ける現場だから、視野が広がる

こんな人におすすめ

急性期OTは、正直「向き・不向き」があります。私の感覚では、こんな人におすすめです。

  • 医療機器や病態など、“医療寄りの知識”を学ぶのが嫌じゃない人
  • 状態変化に合わせて、柔軟に組み立て直すのが得意(または好き)な人
  • 多職種と話すのが苦じゃない、もしくは苦手でも“必要だから伸ばしたい”人
  • 患者さんの生活を、短い時間で総合的に見立てる力をつけたい人
  • 脳卒中(高次脳・認知)や整形術後など、専門性を磨きたい人
  • 緊張感はあるけど、その分のやりがいを求めたい人

逆に、じっくり長期で関わって変化を追いたい人は、回復期や生活期の方が合う場合もあります。これは優劣ではなく“相性”です。若いうちは全然就職や転職に失敗してもまだまだ次があります。しかし、年齢や経験年数を重ねると何度も何度も転職するというのはなかなか難しくなってきます。

30代や40代はさすがに20代と同じ感覚で転職を検討するのはリスクが高すぎます。30〜40歳前後での転職のコツについてはこちらの記事でまとめていますので、是非同世代の方が転職をお考えの方は是非参考にしてもらえたらと思います。

まとめ

急性期病院の作業療法は、「医療に携わっている実感」が強く、そのぶん緊張感や責任感も大きい現場です。
ICUや救命領域では、医療デバイスや治療方針の理解が求められ、若手のうちは不安や恐怖感と向き合う瞬間もあります。

 

一方で、脳卒中の高次脳機能・認知評価、運転評価の視点、在宅か転院かを短期間で見極める予後予測、整形術後やハンド領域の知識など、OTとしての専門性が鍛えられる要素が詰まっています。

多職種連携の密度が高いからこそ、共通言語を増やすほど仕事の幅も広がり、存在感も増していきます。「医療の真ん中で働きたい」「評価力を伸ばしたい」「チームの一員として戦いたい」そんな気持ちがある人にとって、急性期はかなり面白いフィールドです。